初期仏教の世界
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ヴィパッサナー冥想
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お釈迦さまの実践方法

【目 次】

1. はじめに

2. ありのままに観る

3. 頭の中のガラクタを片づける

4. 自分の世界に徹底的に戻る

5. ヴィパッサナー実践の三原則

6. 歩くヴィパッサナー実践法

7. 立つヴィパッサナー実践法

8. 坐るヴィパッサナー実践法

1. はじめに
比丘たちよ、この道は、
もろもろの生けるものが清まり、愁いと悲しみを乗り越え、
苦しみと憂いが消え、正理を得、
涅槃を目のあたり見るための唯一の方法です。

 ヴィパッサナー(VIPASSANÂ)は、お釈迦さまが、我々に確実に悟りを体験できるように教えられた実践方法(修習,瞑想)です。二五〇〇年もの歴史を通じて、テーラワーダ仏教(上座仏教)の長老たちによって守られ、今日まで連綿と伝えられてきた、誰にでも簡単に実践できる、とても合理的な「こころを育てる」方法です。みるみるうちに心が成長していく過程を、ぜひご自分で試してみてください。

 本来の『仏教』とは、自ら覚醒するための実践法なのです。

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2. ありのままに観る

 ヴィパッサナーの実践法は、とてもシンプルです。ただ、今の自分に気づく。そこに、深遠な世界が広がってくるのです。パーリ語でvi ヴィとは「ありのままに・明瞭に・客観的に」、passanâ パッサナーとは「観察する・観る・心の目で見る」という意味です。「今この瞬間の自分自身をよく観る」ということです。瞬間瞬間に起こる、思い込みやしがらみを理解できるvipassanâ ヴィパッサナーは、「気づきの瞑想」や「洞察の冥想」ともいえるでしょう。

 ヴィパッサナーは、一つの型にはまった瞑想法ではありません。特別な世界に到達したり、人と違う超越的な力を得るためのものではありません。また、なにかを信ずるという宗教でもなく、イデオロギーや主義でもありません。あらゆるとらわれや執着から生まれる悩み苦しみを離れ、苦を超える方法なのです。普通の生き方と変わった行法ではなく、日常の生き方そのものに智慧の光を照らしてみることです。

 ヴィパッサナーは“今という瞬間に完全に注意を集中する”実践です。何をしていても、“今・ここの自分に気づいていく”こと。それが、ヴィパサナーです。自分を客観的に“よく観る”のです。

 今ここの一つ一つの瞬間に意識を向ける。心地よいことでも不快なことでも、ありのままの体験を価値判断しないで、そのまま観るのです。葛藤をシャットアウトしたり、コントロールしようとして新たな問題を作るのではなく、ただ気づくだけ。それが観るということです。それが苦悩を超える道です。安らぎが訪れ、心と体を癒すことになるのです。波立っている水面が穏やかになってすべてを映し出すように、深い智慧と洞察力が生まれてくるのです。

 ヴィパッサナーは自分の内部から、自分の一つ一つの瞬間の体験から、学びとるものです。未来に理想を描いて、そこに到達するために努力するのではありません。確実な“今・ここの私”を徹底的に掘り下げようというのが、ヴィパッサナーの実践です。

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3. 頭の中のガラクタを片づける

 私たちの日常生活のあり方は、すぐ評価を下したり、防御や攻撃をしたり、落ち込んだり舞い上がったり、無意識のうちに自動的に反応しています。私たちは、その自動反応に莫大なエネルギーを使い、心はあちこちさ迷って思考や幻想の中を漂っています。

 ヴィパッサナーを実践するためには、ひとまず頭の中のガラクタを整理しましょう。きれいな部屋にしたければ、まずガラクタを整理することから始めなければなりません。

 頭の中のガラクタとは、「私には能力がない」「神秘体験をしたい」「病気を治したい」「こうなりたい、ああなりたい」というようなものです。そういったガラクタで頭が満杯である限り、何も得られず、成長することもできません。

 希望や期待や願望などのガラクタはひとまず置いて、自由で柔軟な心、子供の無邪気さに戻って始めることが大切です。

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4. 自分の世界に徹底的に戻る

 ヴィパッサナーはいつでもどこでも実践できます。今ここの動作、行動、感情に気づいているかどうか、それだけのことです。

 自分を徹底的に観ることです。自分が自分自身の主宰者でいられるのは、このヴィパッサナーを実践している時だけとも言えるでしょう。それ以外は、自動的な反応で行動したり、他人や外部から操られているようなものです。

 私たちは、ちょっとしたことで感動したり、悲しくなったり、暗くなったりしてしまいますが、このまだ育っていない子供のような心は成長できるはずです。

 ヴィパッサナーをしていると、人からなんと言われようと、誉められようとけなされようと、心の中に感情の波は起こらない。そういう落ち着いた心が出てきます。そしてヴィパッサナーがさらに進んでいきます。こうして心が成長していくのです。

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5. ヴィパッサナー実践の三原則

 まずヴィパッサナー冥想実践法の三原則を覚えておきましょう。

1. スローモーション。
2. 実況生中継。
3. 感覚の変化を感じ取る。

 一つ目は、スローモーション。からだをふつうのスピードで動かすのではなく、できるだけゆっくりスローな動きで行うこと。

 二つ目は実況生中継。今行っていることを、頭の中で簡単な言葉で確認すること。それを隙間なく、切れ目なくするのです。これを実行すると、雑念が消え、瞬時に集中力が生まれます。

 三つ目は、感覚の変化を感じ取ること。手を上げたり、歩いたり、座ったりするたびに、からだの感覚が変わります。考えるときも激しく感情が変わっていくのです。これらの変化を何も解釈せず、感じることです。

 この三原則に基づいて行動することが、ヴィパッサナー実践になります。

 「そんな簡単なことでよいのだろうか」と、思うかも知れません。それも妄想です。そのような妄想に明け暮れるのではなくて、やってみることです。さまざまな妄想に迷うことなく、今ここに意識を保ち続けていれば、いつの間にか驚くほど、心が成長していきます。たったそれだけで、心とからだの関係が理解でき、落ち着いた心境に至ることができます。

 何を気づいてもかまわないのですが、楽に実践できるように『歩くこと』『立つこと』『座ること』という簡単な動作で実践をします。そのうち日常生活の中でも気づきが実践できるようになります。

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6. 歩くヴィパッサナー実践法

 歩く冥想は、30分〜1時間くらい時間を決めて集中的に実践する方法もありますし、日常生活の中で歩く度に実践するという方法もあります。どちらでも、自分の生活にあわせて実践すればよいのです。日常生活の中で歩くときは、「左足、右足、左足、右足…」と足の動きを感じて頭の中で言葉で確認しながらふつうに歩きます。

 集中的に歩く冥想を実践するときは、まず背筋を伸ばして、手を前か後ろで組みます。左足から歩くならば、左足に神経を集中させ、「左足」とこころの中で言葉で確認し、同じく「あげます」と実況しながら左足を上げ、「運びます」と実況しながら左足を運び、「おろします」と実況しながら左足を降ろす。次に、右足に神経を集中させて「右足」と確認し、「あげます」と実況しながら右足を上げ、「運びます」と実況しながら右足を運び、「おろします」と実況しながら右足を降ろす。このように実況中継を絶やすことなく歩くことを続けるのです。

 歩く冥想実践は、わざわざゆっくりと歩く必要はありません。足の動きを感じやすい、実況しやすいスピードで、自然に歩いてください。

 ポイントは歩く際に、足の感覚を丁寧に感じることです。足をあげると同時に、あげるという動きを感じてみる。足を運ぶときは、運ぶという動きを感じてみる。足をおろすときは、おろすという動きを感じてみる。

 はじめはうまくいかないかもしれませんが、とにかくチャレンジして下さい。どうしてもできないと思うときも「左足、上げます、運びます、降ろします、右足、上げます、運びます、降ろします…」と隙間なく実況中継することだけでもつづけてみて下さい。徐々にできるようになります。

 また、このシンプルさに飽きてきてつまらなくなって、頭はどこかへ逃げたくなるかもしれません。気にせずにつづけてみて下さい。

 歩くということは無意味なことではなくて、人生の大事な一部ですから、シンプルだと軽視するわけにはいきません。私たちはいろいろ複雑なことをしていると思っていますが、生きる上で人々が行っているすべての行為を分析してみると、すべてがあきれるほどシンプルであることがわかります。それこそが、複雑な人生に対する答なのです。

 初心者には歩く冥想が入りやすいでしょう。ブッダの時代から、悟りを開いた人は、坐る冥想より長い時間歩く実践をすることによって成長しました。歩く冥想は、眠くならないし、早く落ち着くし、体と心の調和が速やかに実現できる実践方法なのです。

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7. 立つヴィパッサナー実践法

 いま座っているということにして、「立つ」実践の方法を説明してみましょう。

 できるだけゆっくりと、手の動き、からだの動きを実況しながら、立って下さい。立ち上がったら、「背中を伸ばします」と背筋を伸ばして下さい。「手を動かします、手を組みます」などと実況しながら両手を前か後ろに軽く結んで下さい。目は半眼にして下さい。意識を足の裏にしっかりと向けて下さい。

 何も考えず、単純に、「立ってます、感じてます、立ってます、感じてます…」と足の裏に集中して、実況中継をつづけて下さい。立つ冥想実践は10分間くらいで十分です。

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8. 坐るヴィパッサナー実践法
冥想会の様子(座禅中)

 座布団か椅子を用意します。

 「坐ります」「しゃがみます」「手を動かします」などと動作を実況中継しながら、楽な形で座ります。足を組む場合は「足を組みます」と足を組み、「背筋を伸ばします」と、実況中継しながら背中をまっすぐにします。「目を閉じます」と目を閉じます。三回くらい「吸います、吐きます」と実況しながら深呼吸します。

 次に「待ちます」と、自分の中に生じてくるものを待ちます。

 それから、「膨らみ」「縮み」「痛み」「しびれ」など、気になるからだの感覚を、実況し続けます。

 「雑念」「妄想」「眠気」「苛立ち」などの心の感覚も、実況します。どれかひとつのことに集中する必要はありません。ありのままの状態を実況中継します。

 坐る冥想は、自分のペースで、15分〜45分間くらいすればいいでしょう。無理にがんばって長く座る必要はありません。冥想を終了するときは、ひとつひとつの動作を丁寧に実況しながら「終わります」としっかり確認してから終えて下さい。

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(参考ページ)

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